The search for
a human way to kill
By
Victoria Gill, BBC News. 8 August 2012 Last updated at 00:20 GMT
多くの州で死刑囚の死刑執行の際に使用される3種混合薬は、必ずしも苦痛なく死を迎えさせられるものではないかもしれません。新しい方法への移行は静かな批判を呼ぶであろうか?
今年8月1日、ロナルド・スミスは死去するはずだった。
彼は、30年以上前に起した2件の殺人事件で、モンタナ州より死刑を宣告された。しかし、30年に及ぶ死刑囚官房への収容と執行期日の計画や延期を経た後、新たな法的問題が更なる延期をもたらした。
これはスミスが有罪判決を受けた事件と関係するものではなく、州が彼を死に至らしめる方法の案に関係するものである。
この事を取り正したアメリカ自由人権協会(ACLU)は、モンタナ州が執行に用いるこの3種混合薬は、不要の苦痛をもたらす可能性かあると訴える。
麻酔専門医のStanley Deutschによって“最大限人道的”に生命を終わらせる方法として生み出され、短時間に苦しみ無く実施するものとされる。
化学的なやけど
しかし、近年の執行で見られる3種混合薬による明らかな苦痛を伴う執行事例により、この方法の価値についての議論が引き起こされている。
1982年にテキサス州ではじめて使用されて以来、3種混合薬として知られるこの薬剤は死刑執行の方法としてアメリカ国内で一般的なものとなった。
第一薬であるバルビツレートは中枢神経機能を“遮断”し、囚人を意識不明に導く。第二に筋肉が麻痺し呼吸が停止する。第三の塩化カリウムで心臓が停止する。
3種混合薬の方法は、致死ガスや電気椅子に比べてより人道的な代替え方法として導入された。しかし、批判家は懐疑的だ。
“実際にこれらの薬物がどの様な作用をもたらすのかを全て知ることは不可能だ”ニューヨークのフォーダム大学の教授であるDeborah Dennoは述べる。“薬剤による鎮静が効きすぎて泣くことが出来ず、痛みを感じても麻痺して動けない、または第二薬で閉じ込められた状態にある可能性もある。”
2006年12月14日、Angel Diaz死刑囚の執行は合計で34分かかり、第二薬の注入で完了した。
執行の証人は、Diaz死刑囚が執行の最中に“息をあえぎ”“顔をしかめた”と報告した。
剖検では、Diazの腕に施された留置針が血管を通って柔らかい組織の中に達し、化学やけどを起こしている事を明らかにしている。
当時のフロリダ州議員であるJeb Bushは、一時的に翌日からの刑の執行を見合わせた。その後の書面では、死刑囚は恐らく神経遮断薬によって“進行する窒息の状態”の中で死に至り、“カリウムによって誘発された焼かれる刺激”を経験したのではないか、とされている。
この書面を書いた弁護士と医療専門家は、“致死的薬物注射により、常に痛みおよび苦しみの無い死を与える、という世間一般の見解に疑問を投げかけるものである”として結論を結んでいる。
執行における進化
2008年、米国の最高裁判所において、3種混合薬による手法は合法で、“残酷かつ不適切な罰”を禁じる米国憲法の修正第8条を破らないとした。
しかし、2009年に行われた三種混合薬によるRommel Broom死刑囚の執行完了に2時間を所要した事例以降、オハイオ州は執行方法を麻酔薬の単回投与に変更した最初の州となった。専門家は薬剤投与に適した静脈を探す事が出来なかった。18回の穿刺の後、死刑囚は現在も収容されている死刑囚官房へと戻されたのである。
そして、他の州もオハイオ州に続いた。
33州のうち24の州で死刑制度が導入され、未だ3種混合薬を使用していた最中、5つの州では現在薬剤一種の方法にし、4つの州では薬剤一種の致死注射方法への転向の意向を公言している。
“過去の2年間、我々は致死注射の歴史全体で見るよりも多くの薬剤使用における変更を目にした。”Denno教授は述べる。
これらの変更を行った州は、その理由については口を閉ざしている。
最近になって3種混合から1種単回の方法へと変更をした自身の決定の説明として、ジョージア州訂正省がBBCに唯一語った事は、“米国周辺の訂正省の役人の間で医療証言を”再考し、決定を行う前に執行手順についての議論を行った、という事である。
この変更には合衆国が直面する、3種混合薬に必要な薬剤の不足にも関係する。薬のほとんどを生産するヨーロッパ連合が、致死量注射のための薬の使用について輸出制限を設けたのである。
安楽な死
1977年当時、三種混合薬を始めに承認したオクラホマ州のJay Chapman監察医は、ペットの安楽死と同じ方法である、麻酔薬単一の多量投与による単一薬剤投与方法を承認している。
Chapman医師はBBCニュースに対し“安楽死の際に単一薬剤投与の方法を獣医師が用いるのは、単純にその手法が人道的であるからだ”と述べた。
単一薬剤投与の方法は、三種混合薬剤投与の方法に比べて死に至までの時間が長く、始めに致死投与が考案された時は注目されなかった。所要時間が長い程人道的ではないと見なされたのである。
マサチューセッツ州アマースト大学法学部のAustin Sarat教授は、電気椅子、絞首や致死ガスに続く致死投与には毎回の執行でより痛みの少ない死を確立する“欠陥のある技術”であると述べる。“絞首では、首を折られるというよりも首を絞められる。電気椅子では、死刑囚が炎に包まれる事例が起きている。三種混合投与ではダメで、現在、我々は一種単一投与まで来たのである。正当な形で執行を行う為に安楽に、安静に死に至らしめなくてはならない。ただ、それがどのような事なのか我々には理解できないという事なのだ。”
しかし、Chapman医師は現行の方法もまた人道的であると考える。
“死刑囚が被害者に行った事を考えれば、多少人道的であり過ぎるとも言える”と彼は言う。