2013年9月10日火曜日

てんかん;基礎 - てんかんの突然死(Sudden Unexpected Death in Epilepsy – SUDEP)について


Sudden unexpected death in epilepsy (SUDEP)


はじめに
Epilepsy Action は、てんかんに関係するリスクを患者とその家族が認識する事がとても大切だと考えます。ここではてんかんによる突然死(Sudden Unexpected Death in Epilepsy SUDEP)という、重大なリスクについての説明をします。

てんかんが原因で死亡するリスクは低いという事を是非覚えていてください。そして、そのリスクをさらに低くするためにできる事があるのです。

知人をSUDEPで亡くした人の多くは、亡くなる前にリスクについてもっと知識を持っていればよかったと話します。そこで、てんかんに関連する突然死のリスクに対する認識を高める事を目的とし、そのリスクを減らす方法の実践的アドバイスと提案をこれから行います。

過去、そして現在も継続して多くのSUDEPの研究が行われています。しかしながら、専門家によってSUDEPの全てが解明されている訳ではありません。現在解明されている事について、以下で紹介します。

てんかんにおける突然死(SUDEP Sudden Unexpected Death in Epilepsy) の定義
てんかん患者が、予期せずに突然亡くなり、明らかな死亡原因が見つからない場合はそれを「てんかんによる突然死(SUDEP)」、または「てんかんによる原因不明の突然死」と呼びます。

SUDEPの原因
SUDEPと発作には関連性が示されています。正確な原因は不明ですが、複数の解釈があるでしょう。しかしながら、脳内で起こる発作の活動が心拍や呼吸に変化を起こすと考えられています。これが原因で患者の心拍や呼吸が停止する可能性があります。

SUDEPの危険因子
てんかん患者1000人中1人にSUDEPが起こると推測されています。SUDEPを予測する方法はありませんが、てんかん患者の中には他の人に比べてより高いリスクを持つ人がいる事がわかっています。また、唯一もっとも重要な危険因子は、抑制されていない全身性強直性間代性発作です。このタイプの発作で患者は意識を失い、体が硬直して震えが始まります。

SUDEPは頻繁に発作が起きる人、頻繁に起きていない人の両方に起こります。しかしながら、発作の回数が多いほどSUDEPのリスクも高いと考えられています。発作がない人のSUDEPのリスクは非常に低く、てんかんを診断されたばかりの人で起こる事は稀です。

SUDEPのリスクを高めると考えられている要因は以下の通りです
  • 抑制されていない全身性強直性間代性発作を持っている
  • 処方の通りにてんかん薬を服用していない
  • てんかん薬で抑制されていない発作を起こす
  • てんかん薬を急に、また頻繁に変更する
  • 若い成人年齢(特に男性)である
  • 寝ている時に発作を起こす
  • 一人でいる時に発作を起こす
  • アルコールを大量に摂取する


てんかん患者のSUDEPリスクを減らす方法

発作の抑制
SUDEPのリスクを減らすもっとも効果的な方法は、発作の回数をできる限り減らす事です。患者の発作が抑制されていない場合は、以下の方法によっててんかんの管理を試みることが可能です。

  • てんかん薬を処方の通りに服用する
  • 医師に相談せずにてんかん薬の服用を止める、または服用を変える事は決してしない
  • てんかん薬は余裕を持って所有し、切らせない
  • 事前に、てんかん専門医や専門看護師に、薬の服用を忘れた場合はどうすべきかを聞いておく
  • 発作が継続している場合は、てんかん専門家によるてんかんの再検査をお願いしましょう。服用中のてんかん薬の変更や、外科手術などを含む他の治療を提案されるかも知れません。
  • 発作について記した日記をつけましょう。医師が患者に一番合う治療を検討する上で役に立ちます。また、患者が自身の発作にパターンがあるか、または発作の引き金になっているものがあるかを見るために役に立ちます。
  • 発作の引き金になる状況を避けましょう。てんかん薬の服用を忘れる、睡眠不足、ストレス、アルコールの摂りすぎなどが一般的な引き金です。
  • 患者のてんかんの抑制が難しい場合は、かかりつけの専門医に、治療を受けるためにてんかん専門病院で再診察を受けることができるか聞きましょう。
リスクを減らすその他の方法
  • 発作が夜中に起こる場合は、他の人に発作が起きた事を知らせる事ができるようベッドに呼び出し警報機の設置を検討しましょう。これにより、患者を回復体位にする、また、必要であれば救急車を呼ぶなど、患者に必要な手助けを行う事ができるようになります(ベッドの呼び出し警報機は作動しない事もあります。発作を感知しない、または理由なしに電源が入らない事もあります。また、呼び出し警報機によるSUDEPリスクの軽減は立証されていない事も念頭に置いて利用してください)。ベッドの呼び出し警報機についてはこちらをご参照ください;http://www.dlf.org.uk
  • 患者は周りの人に自身のてんかんについて、また発作が起きた場合には時にどのような対処が必要なのかについて話しましょう。また、その他の人も認知できるように、認証アクセサリーやてんかん認識カードを携帯しましょう。
  • 一人でいる時に発作を起こす事はSUDEPの危険要因です。同居人を持つようにするなど、住む場所や行動を考える上で、この事を念頭に置くべきでしょう。

発作を起こしている人のSUDEPリスクを下げる対処法
意識を失う発作を起こした人が近くにいた場合は、以下の回復までの対処法を参考にしてください。この対処法がSUDEPのリスクを下げるかも知れません。

強直間代発作で紹介したACTIONを参考にします;


A Assess
状況判断 - 発作が起きている人が怪我をする危険はありますか?当たって怪我をしそうな物がちかくにある場合は移動させましょう。
C (Cushion)
上着などを利用して頭の下にクッションを敷き、頭部を怪我から守りましょう。
T (Time)
時間を計る - 発作が5分以上続く場合は、救急車を呼びましょう。
I (Identity)
健康状態が記されたアクセサリーや身分証明書を探しましょう。発作を起こしている人の発作の種類や、対処法がわかるかもしれません・
O (Over)
発作が終わったら、横を下にした体勢(回復体位)にしましょう。そばに付き添い、意識を取り戻した時は安心させましょう。
N (Never)
発作を起こしている人を固定する、口の中に物を入れる、食べ物や飲み物を与える、等の事は決してしてはいけません。




以下のような場合は救急車を呼びましょう;
  • 初めての発作である事を知っている時
  • 発作が5分以上続いている時
  • 合間に意識を戻す事なく、発作の後に再び発作が始まった時
  • 発作を起こした人が怪我をした時
  • 発作を起こした人に救急の治療が必要と考える時



SUDEPに関する情報
SUDEP Action ;https://www.sudep.org




てんかん;基礎 - 発作の引き金になるもの/てんかんと遺伝について


Things that trigger seizures

発作の引き金になるもの

特定のてんかん患者において、ある物事が発作を引き起こす傾向を持つ場合があります。これらは「引き金」とも呼ばれます。引き金には、ストレス、睡眠不足、アルコールの摂りすぎなどが挙げられます。中には、食事を抜くと発作が起きやすいという患者もいます。また、てんかん薬を服用しない事も一般的な引き金の一つです。てんかん患者の中には、ごく稀に閃光やちらつく光が発作の引き金になる人もいます。そして、引き金を避ける事によって発作が起こらないようにする事ができます。


Epilepsy and inheritance


てんかんと遺伝

はじめに
てんかんに罹患しているという事は、時々発作を起こすという事でもあります。誰もがてんかんに罹患する可能性を持ちますが、中にはてんかんに罹患するリスクが他の人に比べて高い人も中います。
てんかんの病状は複雑で、また多くの異なった種類があります。てんかんに罹患する理由も様々です。

l   生まれつきてんかんを持つ人もいます。てんかんを持つ親から生まれる子供100人のうち2から5人が、遺伝性てんかんを持つと考えられています。
l   脳損傷が原因でてんかんに罹患する人もいますが、その原因は様々です。これには、難産、髄膜炎などの脳の感染、脳卒中や重篤な脳の損傷などが含まれます。脳に損傷を受けた人全員がてんかんに罹患する訳ではありません。
l   てんかん患者10人中約6人では、はっきりとした罹患の原因はわかっていません。


てんかんが遺伝する理由とは

ある特定の種類のてんかんは、家系内で遺伝している可能性があります
ある特定の種類のてんかんは、家系の中で遺伝している可能性があります。小児欠神てんかん、若年性ミオクローヌスてんかん、光過敏性てんかん、熱性発作などが挙げられます。しかしながら、家系の中に異なるタイプのてんかんが現れる事の方がより一般的です。

低発作いき値の遺伝の可能性
私たちの脳には「発作いき値」と呼ばれるものがあります。発作いき値が低い人は、高い人に比べてより発作を起こしやすい傾向があります。また、低い発作いき値は遺伝する可能性があります。

てんかんを起こす他の病状が遺伝する可能性
てんかん患者100人中、2から3人のてんかんの原因はてんかんを起こす異なった医学的状態を遺伝した事によります。例えば、結節性硬化症は遺伝する稀な病気ですが、体のあちこちで良性(非がん性)腫瘍ができ、その事により、てんかん、学習障害や自閉症を含む他の病気を引き起こす可能性があります。

てんかんの遺伝におけるリスク
遺伝リスクのレベルは、てんかんの種類によって異なります。もっとも遺伝しやすい種類のてんかんでも、子供への遺伝リスクは100人中15人以下と考えられています。

以下は、てんかん患者がいる家庭に生まれた子供が持つ、てんかん罹患のリスクに関する情報です。

家族にてんかん罹患者がいる
母親
父親
両親
その他の家族


子供がてんかんに罹患するリスク
一般の子供よりも
高め
一般の子供よりも
少し高め
母親のみがてんかんに罹患している子供よりも高め。しかし、子供がてんかんに罹患する可能性は低い

両親が血縁関係である場合は、てんかんの罹患リスクが高くなる(いとこ、その他の近い血縁)。
家族の中のてんかん罹患者が多いほど、子供にてんかんが遺伝するリスクは高い


親がてんかんに罹患した年齢
20歳以下
20 35歳
35歳以上
子供がてんかんに罹患するリスク
一般の子供よりも高い
一般の子供よりも少し高め
一般の子供の変わらない

最後に
てんかんや遺伝についての研究は継続的に行われています。近年、科学者によって多くの新しい情報が発見されていますが、解明されていない事もまだ多くあります。

てんかんと遺伝の要約は以下の通りです
l   子供にてんかんが遺伝するリスクは以下に応じて異なる
  • 家系内のてんかんの種類
  • 家族のどのメンバーがてんかんに罹患しているか
  • てんかんに罹患している家族が発症した年齢

l   てんかんの中には、遺伝のリスクが他の種類のてんかんに比べて高いものがある
l   てんかん患者の中には、てんかんは遺伝していないが、低発作いき値が遺伝する人もいる
l   てんかんに罹患する両親から生まれた子供100人のうち、2から5人にてんかんが遺伝する