2013年10月27日日曜日

「ロレンツォのオイル」の考案者、オーギュスト・オドーネ氏 死去

Lorenzo’s Oil creator Augusto Odone dies
25 October 2013 Last Updated at 16:20 GMT



「ロレンツォのオイル」の考案者、オーギュスト・オドーネ氏 死去


医学的所見を否定し、息子ロレンツォの命を救うためにあるオイルを考え出したオーギュスト・オドーネ氏が死去した。


元世界銀行の経済学者でもあったオーギュストは、イタリアで80歳の生涯を閉じたと家族によって伝えられた。

オーギュストは、神経系疾患を診断され余命2年を宣告された当時6歳の息子の治療法を考案するため、科学を自習した。ロレンツォは30歳で死去した。

息子を助ける戦いは、1992年にハリウッドで作製された映画「ロレンツォのオイル」で描かれた。

ロレンツォ・オドーネは副腎白質ジストロフィー(ALD)と診断された。少年期の男子で脳の破壊が進行する神経系疾患である。

この疾患は危険な脂肪酸の「長鎖」の蓄積を引き起こし、子供達は一年以内に麻痺し、視覚を失い、話す事ができなくなる。

医師は、ロレンツォが子供のうちに死亡すると予測した。

しかし、オーギュスト・オドーネとその妻ミケーラはその予測を受け入れる事を拒否し、治療法を見つける事に彼らのすべてのエネルギーを注いだ。


肯定的な結果

正式な科学的研修も受けていないにも関わらず、オーギュストは内科と生化学を勉強し、菜種油とオリーブオイルからアミノ酸の混合物を調合した。

オーギュストはのちにロレンツォのオイルとして知られる事になる調合物の蒸留をするために、ドン・サダビィというイギリスの老化学者を何とか説得する。

家族のあるメンバーで試験をした後、オーギュストはロレンツォにオイルを与えた。結果はめざましく、ロレンツォの脂肪酸の長鎖の値が正常値まで下がった。

ロレンツォの発症を遅らせることができた成果は、医師の予測よりも遥かに長く彼が30歳まで生きたという事実によって証明された。

科学的研究によって、オイルはALD遺伝子を持ち症状がまだ発現していない子供に最も効果的である事が示された。

オーギュストとミケーラ・オドーネの物語はロレンツォのオイルで描かれ、ニック・ノルティとスーザン・サランドンが両親を演じている。

2000年に妻が死去した後、オーギュストはアメリカを離れ故郷であるイタリア・ピエモンテ地方に戻り、子供達の近くに身を寄せていた。






レット症候群翻訳メモ - 理学療法

理学療法
Lyn Weekes FCSP 理学療法士(引退)
2007年 Rett UK


理学療法は科学に基づいた健康管理の専門分野で、運動を健康と幸福の中心核ととらえます。理学療法士は、健康増進、予防的アドバイス、治療とリハビリによって運動能力を見極め、また最大限に引き出す事を目指します。


レット症候群であると診断された患者に理学療法を案内する事は最も重要です。赤ちゃんを含むレットの子供全ての関節には完全な運動機能が備わっており、この能力を維持して、変形の発生を予防もしくは遅らせるために全力を尽くさなくてはなりません。脊椎後弯または脊椎側弯、またはその両方による脊椎変形がおこる危険性が非常に高く、脊椎の問題が発生する前にあらかじめ整形外科医の診察を受けておく事が望ましいでしょう。起立や歩行は膝、股関節と背骨を伸ばすので、脊椎変形の発生を遅らせる手助けになります。適切な座席の使用と姿勢の管理を幼少期から行う事が最も重要です。脊椎側弯が実際に起こる前に脊椎の側面の歪みによる凝り(こり)を探し当てる事ができるため、脊椎の可動性の向上、または維持を目指して理学療法に打ち込むべきです。多くの場合、水治療法や乗馬が効果的です。

若年期のレット症候群の中には筋肉の緊張のゆるみが見られる事があり、理学療法士による正しい姿勢のアドバイスによって変形を最小限にすることができます。関節が極めて可動的で柔軟な子供に変形が起こる事を思い描くのは難しいかもしれませんが、アキレス腱の緊張だけが進む一方で他の部分は柔軟なままになる可能性もある事をあらかじめ知って置くべきでしょう。アキレス腱の緊張は子供の起立や歩行を妨げるでしょう。筋肉の緊張が極めてゆるい状態では股関節の前方脱臼の危険性が高くなるため、特に睡眠中は慎重に体位を決める必要があります。

年長者の多くは股関節の片方または両方に、亜脱臼または脱臼の問題を抱えています。脊椎変形は骨盤傾斜をまねき、そのうちに股関節のぐらつきをまねきます。股関節が内転すると脱臼する恐れがあります。筋肉の拘縮(訳注;筋肉の持続的な収縮、関節に原因がなくとも関節が動かなくなる状態の事)を防ぎ、荷重と歩行の能力を維持することが一番重要です。脊椎を観察している時はレントゲン撮影が役に立ちます。

年を取るにつれて起こる筋緊張(筋肉の緊張)の増加は、レット症候群で良く見られます。弛緩(訳注;筋肉をゆるめる状態)と受動運動(訳注;安静と受動運動(訳注;受け身の状態で動かされる運動)は変形した筋肉への取り組みには欠かせず、積極的な運動に極力励まなくてはなりません。先にも述べたように、水治療法が効果的です。荷重と歩行能力を維持するためには、多くの気配りが必要です。体の両側に一人ずつ付き添うなど、歩行の補助には二人必要かもしれません。

年を取るにつれて理学療法の実施が減る事もありますが、逆に年齢を重ねると体重が増加して硬直が進むために、理学療法の必要性は増します。

以下では、理学療法の重要性とその技法について触れます。


理学療法とは何ですか?また、なぜ重要なのですか?

レット症候群には退行性があり、レットの方が若くして亡くなるのはそのためであるという事が広く信じられています。しかし、そうではありません。多発性硬化症や運動神経疾患でみられる退行性はレット症候群では見られません。

理学療法の主な目的は、変形の発生を予防または遅らせて次に起こる正常な発達を促進する事によって、レット症候群の方の生活の質を可能な限り最大限に上げる事を達成する事です。

さらなる目的:
1. 姿勢の管理は、レットの患者にとって極めて重要です。24時間を通じて、横になっている時と座っている時の姿勢を維持しない限り、重力の影響によって多くの変形が起こります。
Ø   多くの時間をベッドで過ごすため、睡眠の環境を考慮する必要があります
Ø   椅子・車いすの選択は慎重に行わなければなりません。また、子供の成長に合わせて頻繁に見直す必要があります。確実にレットの患者が正しく椅子に座らされるために、スタッフへの訓練が必要な場合もあります。位置や姿勢は、一日を通して監視する必要があるでしょう。

2. レットの患者が、自身で、もしくは補助を受けて活発な運動をする機会を提供する事を目指します。
筋肉の強度を保つためには使わなくてはならず、抵抗する力に対して筋肉を使って鍛えるという事を知っておきましょう。そして、使われない筋肉から力が失われます。

3. 弾力性と伸縮性を維持するためにすべての筋肉群を屈伸(ストレッチ)させることで、拘縮や変形を最小限にすることを目指します。

4. 関節を可能な限り広範囲にわたって受動的に動かし、動きの範囲を維持、向上させることを目指します。

5. 骨格を屈伸させることで骨密度の維持、向上を目指します。この目標を達成するためには、毎日患者が起立する(必要であれば立位補助器を使用)事が大切です。レットの患者は学習に対して素晴らしく前向きです。必要なサポートをできるだけ多く得ることで、一番良い起立の姿勢をとる事ができます。患者が重力に逆らい「筋肉の強度と使い方を得る」まで様子をみて、そして徐々にサポートを減らす事で本人の努力を促すことができます。

6. 能力の維持と向上を目指します。「使うか、失うか」のことわざの通り、例えば、患者が差し出された食べ物を指さすことができる場合、これらの能力を維持するためのあらゆる機会が患者に与えられる事が最も重要です。また、患者は適切なテーブルで適切な椅子に座り、ちょうど良い高さに置かれる必要があります。

7. メモ;レット症候群の方は、概して物よりも人や顔に興味を持ちます。外部からの刺激がないと簡単に自分の中に引きこもってしまいます。散歩に出かけ(必要であれば車いすを使用)外の空気にあたって鳥をながめる、ショッピングセンターに行く、近所のマーケットに行く、など、定期的に外に連れ出す事を目指します。これらには理学療法とは一致しない所もありますが、一部の理学療法的な目的を十分に達成させるでしょう。


レット症候群による問題に対する具体的な治療法は?

肩帯の可動:レット症候群の多くの方が牽引のための固定を着用し、肩帯のつり上げと胸筋の拘縮を抱えることになります。これらは恐らく特徴的な手の動き、呼吸の問題と重力の影響によるものです。したがって、毎日運動を行うと良いでしょう。

アキレス腱のストレッチ:レット症候群では起立や歩行を止めてしまう事が見られますが、これは両足を床に平に置く事ができなくなった事が原因です。
足首を90度の角度で維持するためにあらゆる努力をする必要があります。これには、夜間副子(訳注;副木とも呼ぶ)や、場合によってはボトックス注射も使用しますが、この問題には毎日の起立訓練が効果的です。

膝窩筋(膝の筋肉):膝窩筋の突っ張りが進行する方もいますが、その際は現在の状態を維持するために夜間副子を装着する必要があります。定期的に長さを確認するべきでしょう。

レット症候群における脊椎側弯症の発症率は高いです。受動的かつ積極的な運動によって脊椎の可動性を維持する必要があります。水治療法が効果的です(*1)。

機能:機能や能力の更なる向上をとげるためには、多くの作業を行う必要があります。

例;もし子供が補助のもとで座ることができるのであれば、一人で座ることができるように体幹の筋肉を鍛える多くの訓練を行います。一人で座ることができるようになったら、「立ち上がるために座る」訓練に移ります。多くの子供たちは、一貫して無意識に両足を置くことができます。

うつ伏せ寝:レットの方がうつ伏せに横たわる事に耐える力を鍛える、または維持するよう心がけます。毎日、うつ伏せで横になる時間を持ち、その時はベッドやテーブルの端に両足を当て、足首を直角にします。年長者では股関節屈筋の突っ張りが進み、歩行がますます困難になります。うつ伏せ寝の姿勢は股関節の前側の筋骨を伸ばし、また重力に逆らう伸筋を使う事ができる効果的な体位でもあります。


*1:水治療で使用するプールは多くの理学療法プログラムを行う優れた場所です。一人で水面に浮かぶ事ができるようになるために、使用できる多くの浮遊補助用具を使用する事をおすすめします。能力が上がるに従い、徐々に補助を減らします。レットの方にとって、一人で浮く事による心理的効果は最も良いものです。



資料ソース
RETT UK INFORMATION SHEET - PHYSIOTHERAPY - Frequently Asked Questions
Lyn Weekes FCSP Physiotherapist (retired)
The International Rett Syndrome Foundation



翻訳、編集;片目のにゃみ姉

2013年10月20日日曜日

精神病者の治療とハイエナ


Where hyenas are used to treat mental illness.
By Richard Hooper, BBC Service
16 October 2013 Last updated at 23:40 GMT


精神病者の治療とハイエナ

世界中で最も高い精神病罹患率を持つ国の一つであるソマリアでは、長年の戦争によって医療制度が崩壊し、病気に苦しむ人のほとんどが医療の助けを受けていない。多くが木や自宅などに鎖につながれ、中にはハイエナと一緒にケージの中に閉じ込められる人もいる。一方、この様な状況を変えるべく一人の男が挑戦している。

モガディッシュのラジオ局では、一日に三回ハブ医師の宣伝が流れる。

「彼の頭がおかしくなったぞ!逃げて行くぞ!」役者が叫ぶ。「彼を鎖につなげ!」

このような筋書きはソマリアでは身近なものだ。ある男性が霊に取り憑かれると、ただ彼を鎖につなぎシャイフ(訳注;部族の長老、崇拝される賢人)を呼ぶ、というのが家族に与えられる唯一の選択肢である。しかし、ソマリアの伝統を排除する試みを呼びかける声が、ある若い男の抗議から起きた。

「鎖につなぐのは止めなさい!」ナレーターの声が命令する。「彼を、ハブ医師の病院に連れて行くのだ!もし彼が精神に問題を抱えているなら、ハブ医師の所に連れて行こう。医師は彼を鎖につないだりせずに彼を助けてくれるはず。」


ところが、ハブ医師は正規の精神科医ではない。Abdirahman Ali Awaleという人物で、WHO(世界保健機関)の専門家トレーニングを三ヶ月間受けた看護師である彼は、ソマリアの精神病者の救済を使命にしたのだった。彼は総合失調症から産後うつ病を含むすべてを治療することができると主張する。

しかし、ハブ医師訪問の代わりに訪れる事のできる訪問先は、ソマリアの人気薬草家か、時に残忍で未だに伝統的な治療を擁護するシャイフでしかない。

「私の国では悪い霊が精神病を起こすと考えられており、ハイエナはその悪霊を含むすべてを見る事ができると信じられています。」ハブは言う。「ですから、モガディッシュでは林の中から連れて来られたハイエナを見かけます。家族は350ポンド(560ドル)払って、愛する病気の家族を一晩動物と一緒に部屋に閉じ込めるのです。」

その高額な治療(平均的な年間賃金を上回る)は想像される通り残忍なものだ。患者を引っ掻き噛み付く行為は、ハイエナが悪霊を追い出そうとしていると考えられている。子供を含む患者はこの過程で死亡することも知られている。

「私たちは、これが無意味であるという事を人々に知らせる努力をしている。」ハブは言う。「私たちのラジオ宣伝を人々が聞き、精神病は他の病と同じで、科学的方法による治療が必要である事を学びます。」

ハブの運動は、2005年に彼が道で青年の集団が女性患者のグループを追いかけている所を目撃した事件が発端であった。「誰も助ける人がいなかった。」彼は言う。「その後、私はソマリアで初めての精神病院を開かなくてはならないと決めました。」

モガディッシュにあるHabeb公共精神病院は、ソマリア内に六つあるハブのセンターの中で始めに建てられた。総計一万五千人の患者の治療にあたった。

最後に数えられた時、ソマリア全土では実践的な精神科医がたったの三人しかおらず、ハブには高度な資格が欠けているにも関わらず、国内で先導する精神衛生サービスの提供者になった。彼は、厚生大臣がそのように唱える書面を所持してさえいる。

ハブは、克服できないような任務に直面している。WHOの見積もりでは、ソマリア人の三人に一人が精神疾患に罹患したことがある、もしくは現在している。一方、世界の平均は十人に一人である。何十年にも及ぶ衝突によって住民が最も精神的に傷ついている一部の地域では、その比率はさらに高くなる。心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症例は当たり前で、その状況は、広範な薬物乱用によってさらに複雑化している。

「アラビアチャノキはとても大きな問題です。」ハブは言う。東アフリカで何世紀もの間噛まれてきた薬草の興奮剤である。副作用には、不安による精神障害や精神病が含まれる。「私たちは病院で彼らを治療し、彼らは去って行く。しかし彼らは再びアラビアチャノキを食べる。同じ患者を七回、八回と見ることもある。」

ソマリアにある欧米の援助機関は伝染病をターゲットにして活動を推進する事が多いが、結果が早く安価に得られるためであるという理由が多少ある。一方、ハブは最小限の資金と、NGOや民間の薬局から直接仕入れる向精神薬の不安定な供給によって団体を運営していると述べる。

患者に自身の状態が病気によるものだという事に気づかせるだけでも難しい。ソマリア人は心理的な問題を頭痛、発汗や胸の痛みなどの肉体的な痛みとして訴える事の方が多い。精神的病の基本的な考え方の中にはソマリア文化に存在すらしないものがある。うつ病はその一例で、「ラクダが友を亡くした時に持つ感情」と翻訳される。

しかし、患者を木や部屋に鎖でつなぐ行為が広く行われている事以上に、民間人の精神衛生に対する理解の貧しさを示すものはない。イタリアのNGOであるGRTは、生涯鎖で繋がれる患者を記録している。

「私自身も、死ぬまで放置された多くの患者を助けた」農村部を走行するミニバスを運転するハブはこう述べる。鎖を解き自身のセンターの一つに連れて行くのである。「両親、兄弟、親族、皆ただ木に鎖でつながれ、家族は去る。」

WHOは「脱・鎖」策を打ち出し、病院内の鎖の使用から取り組みをはじめ、習慣の完全な排除を目標に基金を立ち上げた。しかし、ハブでさえも最も暴力的な患者の何人かを鎖につないでいると認めている。

2007年、彼が手に入れたフルフェナジン塩酸塩という抗精神病薬が患者の食欲を増進させた事による、予期せぬ結果の一件について彼は語った。患者は食べ物をあさるためにモガディッシュにある彼の病院の壁をよじ登った。しかし状態は絶望的に悪く、脱走した者の中には軍の監視地で命令を無視したために撃たれた。彼らをベッドに鎖でつなぐ事は唯一の選択肢だった、とハブは結論づける。

「多くの患者が治療のために長い時間を要する。」ハブは言う。「精神衛生上の問題を扱う事に焦点を当てた外部の協力がなく、NGOが介入しない主な理由は費用です。」

彼の士気を煽るのは各家の中に鎖でつながれていると確信する何千人もの患者だ。彼が送信する一覧表には、新しいマットレス、患者の食糧と、彼のミニバンに使うディーゼル油が必要なものとして示されている。また、資格を持つ精神科医と看護師の不足もある。患者への支給に努力する毎日と、自身が目撃する苦痛が代償になっているのは明らかだ。

「肉体的にも精神的にも、とても大変な仕事です。」彼は言う。「はじめた当初私は健康でしたが、現在は糖尿病を患っています。とても、とても大きな問題に一人で取り組んでいるのです。私はテレビで泣き、あちこちの公共の場所でも泣きました。大統領の目の前でも泣いたのです。」彼は言う。「今でも泣いている気分です。」




てんかん;診断 - てんかんにおける脳波検査


EEG tests and epilepsy


てんかんにおける脳波検査

はじめに
患者がてんかんに罹患した時、または罹患が疑われる時には、医師から脳波検査(EEG試験)を勧められるかもしれません。この検査では痛みを伴わずに患者の脳内の電気的活動を記録することができます。脳波検査の結果は、医師が診断をする際や治療を決定する際に役に立つでしょう。

脳波検査には異なったいくつかの種類がありますが、それらの働きやしくみについて以下で説明します。


脳波検査では何ができるのか?
私たちの脳は常に小さい電気信号を発信しています。脳波検査中は、患者の頭部に電極(平らな金属製の円盤)を付けます。電極が患者の脳から電気信号を拾い、脳波測定器に記録します。

電極は患者の脳から電気信号を拾うだけなので、脳に影響を及ぼしたり、痛みを感じさせたりすることはありません。

脳波測定器は、脳が発信する電気信号をコンピューターに記録します。波線のような記録は、患者の脳波のパターンを表しています。脳波検査は、測定中の脳波のパターンを示すことしかできず、それ以外の時の脳波のパターンは異なるかもしれません。

ほとんど人の脳波のパターンは、他の人のそれと似ていますが、中には他の人と異なった脳波のパターンが脳波検査で示されることがあります。これは脳内の変った電気的信号によって起こり、てんかんを示している場合もあります。


一般的な脳波検査
通常、患者は病院で通院患者として一般的な脳波検査を受けます。検査は通常1時間ほどで終わり、その後はすぐに帰宅できます。

検査中、患者は座るか横になります。検査は看護師か検査技師が行うでしょう。実施者は粘着ジェルを使って患者の頭部に電極を付けます。それから、数分の間深呼吸や点滅するライトを見るように指示されるでしょう。これらの活動によって患者の脳内の電気活動に変化が起こるため、診断を出す医師の参考になります。

あらゆる動きが患者の脳内の電気活動に変化を起こし、そして結果にも影響するため、検査の最中はできる限り動かないようにします。


携帯型脳波測定器
携帯型器は、歩行中の測定のためにデザインされました。従って、携帯型脳波測定器は患者が移動中であっても使用することが可能です。数時間、または数日、数週間にわたって脳内の活動を記録することが可能で、通常の脳波検査に比べてより多くの時間の中から脳内のあらゆる異常な電気的活動を拾うことができます。

携帯型脳波検査では、通常の脳波検査で使用する電極に似たものを使用しますが、結果を記録するために電極は小さな機器につながっています。機器はベルトに付ける事ができるので、普段の日常生活を続けることができます。また、通常、検査が行われている間は病院に滞在する事はありません。

患者は携帯型脳波測定器を付けている間、簡単な日記をつけるように医師から指示を受ける事もあります。この日記によって、脳波のパターンを変える患者の行動や特定の状況を見つける事ができます。


睡眠脳波検査
患者は睡眠時の脳波検査を受けるよう医師に指示されるかもしれません。睡眠中または疲労した時に発作が起きている可能性があるからです。または、起きている時に受けた通常の脳波検査では異常な電気的活動が見られなかった事が理由かもしれません。脳波パターンは睡眠中に変化するので、より多くの異常な電気的活動が見られる場合があります。

通常、睡眠脳波検査は一般的な脳波測定器を使用して病院内で行われます。患者は検査の前に眠気を誘う薬を受け取る場合があります。検査は1から2時間で終わり、通常は起床後に帰宅します。


睡眠不足状態での脳波検査
睡眠不足状態での脳波検査は、患者が普段と比べて睡眠を少なくとった状態のもとで行います。寝不足の時には患者の脳内で異常な電気的活動が起きる確立がより高くなります。一般的な脳波検査の結果で異常が認められなかった場合、医師がこの検査を勧めるでしょう。

このテストの実施前に、患者は医師から前夜の一晩は睡眠しない、または通常よりもかなり早い時間に起床する事を指示されるでしょう。

睡眠不足状態での脳波検査の開始は、通常の脳波検査と同じです。脳波検査器が脳内の活動を記録している最中、患者はうたた寝や眠りに落ちるよう努力します。通常、試験は数時間で終わり、患者は目覚めた後に帰宅します。


遠隔ビデオ撮影検査
遠隔ビデオ撮影検査の最中、患者は病院の中で過ごします。この検査では、携帯型脳波測定器を装着し、同時に患者のすべての行動をビデオカメラで録画します。通常、この検査は数日間続けて行われます。てんかん薬の用量を減らす、または投薬を止める事もありますが、これは、発作を記録するために患者の発作を起こしやすくするためです。

検査の後に、医師は患者のあらゆる発作を観察するためにビデオを見ます。また、医師は、患者が発作を起こしている最中の脳波検査の結果をあわせて見る事ができます。これにより、発作の最中の患者の脳内のパターンのあらゆる変化が医師に示されるでしょう。

遠隔ビデオ撮影検査は、すでにてんかんを診断された患者にのみ行われるのが通常です。医師が患者に遠隔ビデオ撮影検査を勧める理由の例をいくつか以下であげます。

患者の発作の種類が明確でない場合
患者に処方しているてんかん薬がうまく作用していない場合
患者の発作が、てんかんではなく他の要因で起きている可能性がある場合
患者がてんかん手術を検討している場合


脳波検査からどのような情報を得られますか?
脳波検査によって、検査が行われている最中の患者の脳内で起きている電気的活動の情報を得ることができます。

他の多くの種類のてんかんを含め、異常な電気的活動は発作の最中でのみ起こります。それ以外の時の患者の脳の活動は正常です。従って、脳波検査の結果で異常な活動が認められなかった場合は、検査が行われた最中の患者の脳内ではてんかん活動は起きなかったという事を意味します。これは、それ以外の時に患者の脳内でてんかん活動が起きた可能性を排除する訳ではありません。明確な検査とは、間違いなく患者がてんかんに罹患していない、という意味ではないのです。

ある種類のてんかんに罹患する人の脳内では、発作が起きていない時でも異常な電気的活動が起きます。これらの患者が受けた脳波検査の結果には、医師が認識する特定の脳波のパターンが示されます。この情報は、診断を下す医師にとってとても役に立ちます。典型的な欠神発作を持つ子供がその一例です。

少数の人では、てんかんに罹患しておらず、一度も発作を起こした事もないのに、異常な脳波検査の結果がでます。これらは、脳炎(脳の腫れ)または空間識失調(めまい)など、他の病状が原因である可能性があります。また、てんかんに罹患していないにも関わらず、両親から異常な脳波のパターンを受け継ぐ人もいます。従って、異常な脳波パターンを示す脳波検査の結果が出たので、必ずしもてんかんに罹患しているという意味ではないのです。


脳波検査で発作の種類がわかりますか?
脳波検査で異常な電気的活動を認識した時、患者の脳のどの部分から発せられているかが示されます。なぜならば、各電極がその真下の脳の部分の活動を感知するからです。全般発作の場合、異常な電気的活動は患者の脳の両側に着けた電極から記録されます。焦点性発作の場合は、異常な電気的活動は患者の脳の特定の部分に着けた電極から記録されます。

発作の種類についての詳細はこちら; http://nozmoz.blogspot.jp/2013/08/blog-post_9686.html


脳波検査で、脳の損傷の有無がわかりますか?
脳波検査では、脳の電気的活動の情報のみが得られます。脳内の損傷や物理的異常があるか否かは示しません。


脳波検査が発作を引き起こす事はありますか?
脳波検査中に発作を起こす危険性はわずかにあります。点滅する光を見る事や深呼吸を行うなど、検査の通常の流れの中で行われる事によって引き起こされる可能性があります。

かかりつけ医が、脳波検査を受ける前に投薬量を減らす、または睡眠の量を減らすよう患者に指示をするかも知れません。これらも発作を起こす危険性を高くするでしょう。


脳波検査中に発作を起こした場合、運転資格に影響しますか?
英国では、運転免許を持っている人が発作を起こした場合、12ヶ月間発作を起こさずに過ごさない限り、運転を中止しなければなりません。

もしも発作を起こす危険性について懸念がある場合は、検査を勧めた医師に相談しましょう。

てんかんと運転についての詳細はこちら(英語);https://www.epilepsy.org.uk/info/driving


脳波検査を何度も受ける必要がありますか?
脳波検査で、患者の脳内に異常な電気的活動が示されなかった場合、かかりつけ医にもう一度受けるよう指示されるかも知れません。可能であれば、患者がより発作を起こしやすい時に脳波検査を受けると役に立ちます。早朝や、また女性であれば、生理中やその前後などが例です。


その他
かかりつけ医に脳波検査を指示された場合は、通常、患者は病院から手紙を受け取るでしょう。この手紙には、検査中に予測される事が書いてあるでしょう。ゆったりとした服の着用や、検査の前は髪を洗わないなど、患者がすべき事などが書かれている事もあります。

脳波検査を受ける前に感じた疑問については、かかりつけ医、てんかんの専門医、てんかん専門の看護師や、試験を行う人などに聞く事ができます。または、てんかんホットラインに連絡しましょう。