2013年8月17日土曜日

てんかん;基礎 - 紹介

Epilepsy Action
http://www.epilepsy.org.uk/info/basics/living-with-epilepsy#about



はじめに

てんかんについて
英国では、60万人を超える人々がてんかんを持ちます。
私たちの誰もが、単発のてんかん発作を起こす可能性を持っています。ところが、てんかんを罹患した場合には一度以上のてんかん発作を起こします。そして、将来再び発作を経験する可能性もあります。

だいたい、100人中5人が生涯の中でてんかん発作を経験します。これら5人中4人がてんかんの罹患に進行します。

てんかんには色々な種類があります。その中には、幼年期に始まるものや、成人以降に始まるものがあります。また、短期間のものや、一生涯に及ぶものがあります。

てんかんの原因
10人中6人の患者のてんかんの原因は、医者によっても判明していません。これらの多くの人々は、症状からてんかんである可能性が高いという考え方です。

しかし、中にはてんかんの原因が判明している患者もいます。その原因の一つに脳の損傷があります。脳損傷を引き起こす要因は複数あり、以下が例です;

l   難産
l   髄膜炎などの脳の感染
l   脳卒中
l   重篤な脳の損傷

脳への損傷が無くてもてんかんに罹患します。非常に一般的な病気の中にはてんかんを引き起こすものがあり、結節硬化症や脳性麻痺など、かなり一般的な病気でもてんかんに罹患します。学習障害を持つ人の中には、学習障害を引き起こしている原因が、同時にてんかんも誘発する可能性があります。

大人になってから始まったてんかんは、その原因を見つけられる事が多いです。例えば、脳卒中からの回復中である場合や、過去に事故や病気を患った際に脳に瘢痕を残した場合などがあげられます。

てんかん発作について
私たちの脳内では、常に電気的活動が起きています。てんかんは、脳内で突然、激しい電気的活動が活発に始まる時に起こります。このような激しい電気的活動の事を「てんかん発作」と呼びます。

発作の種類
発作には多くの種類があります。てんかんの活動が脳内のどの部分ではじまるによって分類されます。

焦点性(部分)発作
これらの発作では、てんかんの活動は脳の一部分でのみはじまります。患者は、この種類の発作に対して警戒感を抱くでしょう。もしくは、何が起きているかわからないかも知れません。体の一部が動き、自分で止めることができないかも知れません。また、異常な感覚や感情を持つかもしれません。発作が起きている事に周囲にいる人々が気付かない場合もあります。

焦点性発作は、非常に短いか数分で終わります。焦点性発作ではじまったてんかん活動が脳の他の部分に広がり、全般発作になる事もあります。

全般発作
この種類の発作には、左右の両半分の脳内で起こる電気的活動が含まれます。この種類の発作の際中では意識がなくなり、また、非常に短いために誰も気がつかない事もあります。中には数分間にも及ぶ事があります。筋肉の強張りやけいれんが起こり、起立していた場合は倒れるでしょう。

発作の誘因とは
てんかん患者の中には、特定の物事によって発作が誘発される傾向が高い人がいます。これらは、「誘因」と呼ばれ、誘因にはストレス、不眠やアルコールの過剰摂取があげられます。食事を摂らないと発作を起こす傾向が強いと話す患者もいます。てんかん薬の飲み忘れもよくある誘因の一つです。てんかん患者の中には、ごく稀に閃光やちらつく光が誘因で発作を起こす場合があります。

誘因を避ける事で、発作を起こすリスクを軽減することが可能です。

てんかんの診断と治療

診断
発作に対する的確な治療を得る上で最も重要な事は、的確な診断を得る事です。医師は、患者の発作について聞いた内容に基づき診断を出します。

発作に関する詳細を記した日記が役立ちます。この日記を医師に提出することができるのです。患者の発作が起きたところを見た人が、医師の診察に同行するのもとても良いでしょう。発作の様子を医師に説明する事が出来るからです。

仮に医師が、患者がてんかんに罹患していると考えた場合は、てんかんの専門医の診察を受けるよう設定をします。通常、成人患者の場合は神経科医、子供の場合は小児科医です。医師は、患者にいくつか試験を受ける事を勧めるかもしれません。試験には、血液検査、EEG(脳波の測定)、脳のスキャンが含まれるでしょう。これらの試験は、医師がてんかんの種類と原因を特定する上での判断材料になります。しかしながら、患者がてんかんを罹患しているか否かを証明する試験は存在しません。

治療
てんかんの主要な治療法は、てんかん薬です。抗てんかん薬や、AEDという薬の名前は良く知られています。薬でてんかんを治す事はできませんが、発作の回数を減らす事や、止める手助けをします。てんかん患者100人のうち約40人で、初めて試したてんかん薬で発作が止まります。

てんかんを治療する方法は他にもあり、異なるタイプのてんかん手術や、特別食(子供のてんかん患者が対象、ケトン療法食と呼ばれる)などがあります。

てんかん薬
様々な種類の薬がてんかんに用いられます。かかりつけの専門医は患者に一番合う薬を勧めます。医師は、薬がどのように効くのか、また起こりえる副作用についての説明を患者に行います。通常、薬の投与は少量からはじめ、患者にとって一番効果のある用量になるまで段階的に量を増やします。このような時間をかけた増量は、あらゆる副作用を軽減させる事に役立ちます。

私たちは一人一人が異なり、中には低容量であっても特定の薬が合わない方もいます。このような場合には、患者と医師で他の薬の方が良いか検討する事ができます。

てんかん薬の費用
英国では、てんかん患者によるてんかん薬の自己負担はありません。患者が英国に在住する場合、かかりつけ医師から免除証明書を得る必要があるでしょう。スコットランド、ウェールズ、北アイルランドでは全ての処方箋が無料です。

てんかん患者の日常生活

てんかんと上手く生きる
てんかんを診断された患者には、てんかんと折り合いをつけるための時間が必要になるでしょう。時には車の運転を控えなくてはならないなど、てんかんによって変更を余儀なくされる事があるでしょう。そして、可能な限り、自分の身の安全を守るために出来る事を考えなくてはならないでしょう。しかし、適切な治療により、10人中7人の発作の完全なコントロールが可能になっています。

てんかんを持つ他の患者と話す機会を持つと良いでしょう。Epilepsy Action local meeting に参加するのも良いでしょう。また、forum3eというオンライン コミュニティーに参加する事も可能です。これらは、自身のてんかんについて語ることができる安全な環境です。

もしも、てんかんに折り合いをつけることが非常に困難である場合、また心配や不安を感じる場合は、かかりつけの医師と話す事をおすすめします。

平等法
英国には、職場やサービスを利用する際、皆が公平に扱われる権利を持つと明記した法律が存在します。平等法は、英国、スコットランド、ウェールズで効力があります。また、北アイルランドでは障害者差別禁止法が効力を持ちます。

平等法はてんかん患者を守るために存在し、発作がないてんかん患者でもそれは変わりません。てんかん薬を服用している、していないに関わる事はありません。また、過去にてんかんを患っていた元患者も対象に含まれます。

記憶
何かを思い出す事が困難に感じるのは、てんかん患者では良く見られる問題です。てんかん発作は記憶に影響を及ぼします。脳の損傷がてんかんの原因である場合も記憶に問題を起こします。また、てんかん薬の中には記憶に影響を及ぼすものもあります。

うつ病
うつ病はてんかん患者によく見られます。うつの理由はたくさんありますが、中にはてんかんやてんかん薬に関連する事もあります。てんかんを診断された直後の患者は、生活の中で嫌々ながらも変更を余議なくされる物事に直面するでしょう。また、てんかんを持っているという理由で異なった扱いを受けるかもしれません。患者が自身の気分の落ち込みに気がついた際は、医師に相談し、うつに対する治療を受けましょう。

てんかんによるリスク
てんかん患者の多くは寿命を全うします。これらの患者の発作は非常に短く、特に問題にはなりません。ただ受け入れるのです。しかし、患者はてんかんが原因で死亡するリスクを持つ事も知っておくべきです。発作の結果、死亡する可能性があるのです。または、発作によって起きた事故が原因で死亡する可能性もあります。中にはてんかんの原因が理由である事もあります。例えば、脳に損傷を負うかも知れません。また、中には死亡の原因がわからない患者もいます。このようなケースはSUDEP(Sudden Unexpected Death in Epilepsy - てんかんにおける予期せぬ突然死)と呼ばれます。

てんかん薬を常用し、また自身のてんかんに対するあらゆる不安を医師と話し合うことでリスクを軽減することができます。Epilepsy Action (訳注;当サイトの団体)では、SUDEPのリスク軽減の方法に関するより多くの情報を扱っています。

安全性
てんかんを抱えて、可能な限り安全に生きるにはどうしたら良いかを考える事は良いでしょう。なぜならば、何事にも多少のリスクは伴い、リスクの無い人生を生きる事は不可能だからです。そして、リスクを減らす方法は見つかるはずです。活動をより安全にするために、今までよりも少し多く手順を踏めばよいのです。

人生をどのように導くかは、その人の決断しだいです。しかしながら、一年にたった一度の発作であっても、管理できていないてんかんである場合は慎重にそのリスクを考える必要があります。例えば、入浴中の発作には溺死のリスクがあります。そして、入浴の代わりにシャワーを浴びる事で、患者はそのリスクを軽減できるのです。

てんかん患者が自宅で発作を起こした場合を考慮し、今よりも安全な環境をつくる余地があると考える場合、それを実現するための協力を得られます。在住する地域の社会福祉事業に相談すると良いでしょう。

発作のリスクを軽減する
てんかん患者の生活をより安全にするひとつの良い方法とは、発作が起きないようにあらゆる手を尽くす事です。

発作を最小限に抑える方法には以下があります;
l   発作の誘因がわかる場合には、それらを極力排除する
l   ストレスを完全に排除する事ができない場合、それらと上手く向き合う方法を知る
l   出来る限り、規則的な睡眠パターンを維持する
l   てんかん薬の服用を忘れない
l   てんかん薬を切らさない

余暇を過ごす
通常は、てんかんを患っている事が理由で、休暇にしたい事ができなくなるべきではありません。てんかんを患っている場合は、安全対策を多めにとる必要があります。例えば、水泳に行く場合は、水中で発作が起きた時の対処法を知っている知人と一緒に行く、などです。

アルコールと違法薬物
てんかん患者の中には、飲酒する方とそうでない方がいます。飲むか飲まないかは患者が決める事です。しかしながら、飲酒で発作が起きやすくなる人もいる事を知っておくべきです。

違法薬物の混入物に制約はありません。違法薬物は危険であり、また発作の引き金になる可能性があります。

運転
てんかん患者や一回限りの発作を経験した患者の運転に関する法律があります。運転を止めなくてはいけない時があるかもしれません。これらの法律は、道路の利用者の安全を可能な限り確立するためのものです。

教育
学校や大学を選ぶにあたり、てんかん患者も、そうでない他の生徒と同じ選択肢を持つべきです。平等法は教育にも効力を持ち、てんかん患者である事を理由に差別を受けるべきではありません。また、必要であれば、てんかん患者は学校や大学から特別な支援を受けるためのアクセスを持つべきです。

仕事
てんかん患者は、軍隊を除く全ての仕事に就くことができます。発作が患者や周囲の人を危険にさらす恐れのある業種には就くことができないかも知れません。警察官、消防士、高所の作業員などが例です。

平等法では、てんかんを理由に職場で患者が違う扱いを受ける事を違法と定めています。

もし、てんかんが理由で運転することができない場合は、出勤が困難になるかも知れません。電車やバスの使用が難しい場合は、Access to Work scheme Jobcentre Plus が取り仕切る) が、タクシー利用の費用を補助してくれるかも知れません。

保険
保険を取得する際は健康状態について聞かれます。てんかんに罹患している場合は、その事を正直に伝える必要があります。そうでないと、十分な保険の適応が受けられない可能性があります。保険に関して、平等法の下に定められた特別な規則があります。保険会社は、保険支払いの申請をする可能性が高いと考えられる人に対して、保険契約によって割り増した料金を請求することができます。もしくは、保険入会を断ることもできます。しかし、保険会社は申請者個々のケースを見なければなりません。

援助をうける
てんかん患者は処方箋を無料で得ることができます。また、公共バスや鉄道を割引料金または無料で利用する事が可能でしょう。てんかんが日々の生活に影響する場合は、生活保護を受ける事が可能でしょう。


kis