2012年5月29日火曜日

クロマグロから福島の放射性物質が検出される


Bluefin tuna record Fukushima radioactivity (29 May 2012, Last update at 2:45 GMT)
By Jonathan Amos – Science correspondent, BBC News


クロマグロから福島の放射性物質が検出される

カルフォルニア沖で水揚げされた太平洋クロマグロから検出された放射性物質は、昨年福島原子力発電所の事故によるものである。

魚は海の反対側に移動する前、日本の海洋で回遊していた時に汚染されたと考えられる。
科学者は、魚を食しても安全性に問題は無いと説明する。
しかしながら、このケースにより、移動性の生き物がどの様にして汚染を広大な範囲に拡散させるのかを説明するものである、と指摘する。
「例え何千マイルも離れていたとしても、それぞれの生態がどの様にしてお互いに関わり合うのかを知る手助けとなる」と、ニューヨーク ストニー・ブルック大学 海洋科学教授のニコラス・フィッシャー氏はBBCに述べた。
フィッシャーと同僚は、米国科学アカデミー誌で発表した。

彼らは、福島第一原子力発電所の事故から数カ月後の、2011年8月にサンディエゴ近郊の海から水揚げされたクロマグロ15体の筋肉組織を調べた。
これらは親世代が日本の海で繁殖し一年から数年とどまった後に、えさ場である太平洋東部へと移動する生き物である。
研究の対象になった魚全てに、同位元素134と137の放射性ヨウ素値の上昇が認められた。
ヨウ素137は、水爆実験による放射性降下物としてすでに海洋中にある程度含まれているが、半減期が2年半というヨウ素134の検出は福島に直結するのである。その他に説明のつく同体位の存在が無いからである。

放射性セシウムの測定濃度は、事故前に水揚げされた標本検体全体と比較して約10倍であった。
チームは管理の一環として、太平洋東部で広く消費されているキハダマグロの検査も実施した。
これらには、福島の事故前と後の違いは見られなかった。
この研究が着目されるであろうと考える理由は、クロマグロは漁業にとって非常に貴重で、何千、何万トンもが定期的に水揚げされるからである。
しかし、研究チームは、去年カルフォルニアで水揚げされたマグロを消費者が食べても、健康に問題はない、と指摘する。

放射性物質のレベルは許可されている制限上限値を十分に下回っており、カリウム40など、自然下の環境でも検出されるその他の放射性降下物なども下回っている。
「カリウムは、放射性セシウムのレベルの合計値よりも30倍高かった。仮に、自然環境下で計測される数値と相対的に、カルフォルニアで水揚げされた太平洋クロマグロに含まれる放射性物質の増量値を計算すると、約3%である」とフィッシャー教授はいう。
科学者はまた、魚が太平洋を横断する前(時間の経過と共におちたであろう)にどれ程の放射性物にさらされたであろうかという計算を行い、環境下レベルの50%以上であろうと算出している。しかし、この数値もまた、消費安全の法的要件を満たすものである。
今後水揚げされるマグロには新しい試験が行われるであろう。これらの生き物はより長期間日本の海洋で過ごしており、恐らくはとても異なった汚染負荷量を持つであろう。
研究チームはまた、日本の海洋に接触のあるその他の移動性の動物を対象に調査を拡大させるべきだと考える。
福島による環境汚染は、動物の行動の起源と時期を追うための、潜在的にとても便利な手段である。セシウム134と137の比率は、特定の移動行動における時期や期間を探る時計として活用することが出来るのである。

「この情報は、保全への取り組みや漁業の管理に活用できる可能性があるのだ」とフィッシャー教授は言及する。