Eight arguments
about whether the UK is a Christian country
By Jon Kelly
BBC News Magazine,
23 April 2014 Last updated at 10:14
英国はキリスト教の国であるというディビット・キャメロンの発言に対して、多くの著名人から批判が向けられた。では、首相の主張に対する賛否の意見にはどのようなものがあるのか。
チャーチタイムズ紙に寄せられた首相の言葉は、英国人はキリスト教の国としての地位にもっと自信を持つべきだ、というものであった。
この首相の発言に対し、英国は主として「非宗教的な社会」であると主張する手紙が作家やブロードキャスター、コメディアン、科学者などを含む50の個人の署名と共にデイリーテレグラフ紙に寄せられた。首相を支持する保守派の上級閣僚2名は英国がキリスト教国であることを否定する者は「自らを欺いている」と反論する。
では、主な議論とは何か。
賛同:国勢調査
2011年に行われた国勢調査では、「あなたの信仰は何ですか?」という問いに対し英国とウェールズの住民の59%がキリスト教徒と回答し、2001年の72%から下がった。スコットランドは54%で、過去の65%よりも下がった。北アイルランドでは、83%がキリスト教派に属すると答えた。
2001年以降、自身をキリスト教徒と認識する英国民の総数は400万人以上も減少しているが、それが大多数を占めるという事実は極めて重要です - イングランド教会の最高位で総会のメンバーであるクリスティーナ・レスは述べる。
「国勢調査は、本国の情報を得るうえで最も信頼できる方法の一つです。ここで示された数値には大変に重みがあります。皆がみな教会に行くわけではないが、自らをキリスト教徒とすることを選択したのだ、と反論することもできます。」レスは述べる。
反対 : 教会への出席
一方で世俗主義者は、教会への出席にこだわることは極めて合理的であると述べる。イングランド教会の独自の統計によると、2012年に行われた日曜礼拝の参拝者数は80万人であった。1968年の参拝者数の約半分である。
英国ヒューマニスト協会の最高責任者であるアンドリュー・コプソンは、国勢調査の質問はそもそも回答者が信仰を持っていることを前提にしているため「適切でない」と述べている。2013年度のBritish Social Attitudes
Surveyでは、回答者の48%が宗教に属さないと回答している。イングランド教会に属していると回答した人の割合はたったの20%で、1983年度よりも40%減少している。
「キリスト教やキリスト教の信仰を英国の価値や社会的道徳として築こうとする政権や政治家は、深刻な不安定基盤を築くことになる」コプソンは述べる。
賛同 : 英国国教会
英国には国教会(訳注;国教として公認された教会)があり、司教は貴族院にいる。女王は、国家主席とイングランド教会の最高権威の首長の両方を担う。教会の首長とは君主の肩書きの一つである。
そのため、英国がキリスト教国ではないという主張は歴史的、憲法的現実の両方を無視していると、雇用年金長官のイアン・ダンカン・スミスはデイリーテレグラフ紙で述べている。法律制度はキリスト教の原則である正義と公平性が築いている、とレスは述べる。
ハリー・コール; 教会廃止を公にしている「信仰を失った不可知論者」である彼はThe Spectator誌で、歴史を書き換え文化遺産を無視しない限り英国をキリスト教国であると認めることは不可能である、と記している。
反対;影響力の衰退
堕胎、同性婚、同性愛教育、養子縁組、そしてその他の問題に関する法律は複数の宗教団体が反対するにも関わらず改正された。これは世俗主義者にとって、教会の威信と重要性がもはやかつてのものではなくなっているという証拠である。
2006 Ipsos MORI poll(訳注;リサーチ機関による調査報告)では、閣僚に対する過剰な影響力を持つ国内団体リストの上位を宗教団体と主導者がしめた。A 2013 Lancaster University study of
British Catholics(訳注;ランカスター大学による英国のカトリック信者を対象に行われた研究)では、個人の道徳の問題として「宗教団体と主導者」が彼らの精神的主導者らに対してひどく反していたことを示唆している。調査によると、避妊具を使用することに対する罪悪感を感じるのはわずか9%で、堕胎の廃止を支持するのはたったの19%である。同性婚に関しては反対よりも賛成が上回った。
「キリスト教が我々に課す教えは徐々に浸食され変わっている。我々の法律がキリスト教的信仰によって形成されることは事実だが、同時にそこに起きている変化もめまぐるしい。その理由は、我々が宗教的指向から離れて行っているからだ。」国立世俗学会(the National Secular Society – NSS)の代表を務めるテリー・サンダーソンは述べる。
賛同;文化としてのキリスト教的信仰
多くの無神論者の虚位的存在でもあるリチャード・ドーキンズでさえも、皆と共に聖歌を歌うことが好きな「文化的キリスト教徒」であると自身を位置づけている。ドーキンズは教会の教えを拒否しているが、キリスト教の儀式、象徴や諸機関への愛着の普及は、教会が未だに市民生活の中心的役割を占めているというさらなる証拠だ。結婚する、子供に洗礼を受けさせる、亡くなった人に別れを告げるなどは人生で経験する最も大きな出来事であり、これらは教会で行われる傾向にある、とリーズは述べる。
Conservative Christian
Fellowship(訳注;イギリスの保守党でキリスト教徒の団体)の後援者であるドミニク・グリーブ司法長官は、英国では無神論はあまり進展を遂げていないと述べている。また、社会の根底にある倫理感の多くがキリスト教に基づくのは、1500年に渡りキリスト教の信仰が私たちの国民生活に注がれてきた結果だと述べている。2011年には5万1880件の結婚式、13万9751件の洗礼、16万2526件の葬儀が、イングランド国教会の聖職者によって執り行われた。ONS(訳注;Office for National Statistic)によると2010年の婚姻のおよそ68%が民間の式典として行われている。2012年に英国とウェールズで受理された出生届は72万9674件、死亡届けはおよそ50万件であった。
本国の教育システムにおける教会の重要な役割も関係しているのだろう。2011年の英国公立学校2万校の3分の1がキリスト教の学校で、その68%がイングランド国教会に付属し、30%がローマ教会であった。
反対:非キリスト教の影響
デイリーテレグラフ紙に寄せられた手紙で、世俗主義のプロで著名な方たちは「キリスト教以前の宗教に従うもの、キリスト教ではないもの、キリスト教以降の宗教に従うものなど多くの力が英国を良い方向へ築いていた」と論じている。
彼らはまた一般人の生活に対する教会の貢献を賞賛する一方で、異なった信仰や、信仰を持たないものを例外視するのは間違いだ、と述べている。
不可知論者、無神論者、ヒンドゥー教徒、ユダヤ教徒、イスラム教徒、シーク教徒などの英国人、そして全ての非キリスト教の信仰システムを共有する人たちが英国文化に前向きな貢献をしている、とサンダーソンは述べる。
賛成:カレンダー
祝日がどのように構成されているかを見れば(週日は触れるまでもなく)現在も続くキリスト教の信仰の影響がわかる、とリーズは述べる。
「主な休日であるクリスマスとイースターはキリスト教の祭りや行事のためにある」と彼女は述べる。「クリスマス戦争」とも言われるにも関わらず、この2つのお祭りはキリスト教徒と非キリスト教徒の双方に、広く同じように祝われている。
Sunday trading laws(訳注;日曜日の営業に係る規制)が緩和されたが、稼ぎや日々の些細なことよりも何か他のことのために過ごす日を1日もうける努力をする、という意識がまだ残っている。
反対:他宗教と非宗教の高まり
2011年の国勢調査では非宗教の人の数は1410万人であった。10年前は770万人である。これは総人口の15%から25%に上昇したことを表しており、同時にイスラム教徒の増加も示している。2001年の150万人に比べ、2011年は270万人(割合は総人口の4.8%)と2%上昇した。
仏教、ヒンドゥー教、ユダヤ教やシーク教の宗派への登録数は全て上昇している。ヒンドゥー教の信者数は2001年では26万4000人だったが、2011年では81万7000人に増加した。ユダヤ教の信者数も同じく増加し、過去10年間で26万人から26万3000人に増加している。
シンクタンク「Theos」のリサーチディレクターであるニック・スペンサーは、国勢調査が公表された際に「イギリスには複数の宗教が存在する」と述べている。NSSなどの団体は、この調査の文脈から1つの宗教団体を優位に位置づけることは不公平である、と述べている。