2013年5月19日日曜日

米国精神衛生の聖書、DSM-5が更新される


US mental health ‘bible’ DSM-5 updated
19 May 2013 Last Updated at 06:45 GMT




精神医学の聖書として知られ、精神衛生で最も重要な手引きの中の一つの 更新が発表された。

精神疾患の診断と統計の手引き第5版(DSM-)更新の取り組みに対し、議論と批判が向けられている。

批判は、ルールブックにより悲しみや幼年期のかんしゃくなどの正常な行動が精神的な病気になる、というものだ。

手引きは主に米国内で使用されるが、世界中で影響力を持つ。

本巻の更新は1994年以来初めて。精神衛生の専門家は、精神疾患を診断する方法を更新するために最新の科学の発展を考慮してきた。

変更の発表は、アメリカ心理学会(APA)の会議で行われた。

過食摂食障害、気分を壊す気分調節不全障害(更新前は小児期双極性障害として認識)、買いだめをする障害を含む新たな部類が設けられた。

一方で、更新前は4つの分類に分かれていたアスペルガー症候群は、現在は自閉症スペクトラム障害(ASD)と呼ばれる単一の精神状態の一部になった。

今まで明確にされず、アスペルガー症候群、幼児期崩壊性障害、広汎性発達障害などで知られる自閉症は、現在ASDに含まれる。

ASDの主な症状には、社会的コミュニケーションと社会的交流における障害や、反復的行動、興味や活動の制限が挙げられる。

本発表は、世界保健機関(WHO)のガイドラインを使用する英国やその他の国における診断の方法には影響を与えない。

注意欠陥・多動性障害(ADHD)は修正され、この障害は成人期でも継続する可能性が強調された。

正常が病気に

更新に先立ち、リバプール大学の心理学研究所所長であるピーター・キンダーマン教授はBBCscrubbing up コラムで、「DSM-5は多くの診断基準を下げ、一般人口で精神疾患の疑いを持つ人の数を増やす」と主張している。

「“正常な悲しみ”は大うつ病性障害に分類され、幼少期のかんしゃくが破壊的気分調整不全障害の症状となる。新年の決意でよくあげられる、多くの不運な人間の行動の広範囲が精神疾患になる。食べ過ぎは“過食摂食障害”になる。依存的行動の範囲は大きく広げられ、“インターネット依存症”や“セックス依存症”などの“病気”を含むようになる」と教授は述べる。

遺伝子

DSM-5の症状に基づいた病気の分類方法に対する批判もある。病気の症状ではなく、原因に基づいて診断するために、遺伝子学と精神科学の進展を利用する努力も行われている。

米国政府の米国国立精神衛生研究所 ディレクターは、DSMは正当性に欠けると言っている。

トマス・インセル医師はブログで、「虚血性心疾患、リンパ腫やエイズなどの我々の定義とは違い、DSMの診断は臨床症状の集まりについて一致した意見に基づいており、客観的な実験室での測定値ではない。他の医療領域で考えれば、胸の痛みや発熱の質の性質に基づいて診断システムを作成することと同じ事だ」と述べている。

中には、病気間の区別が狭まった範囲もある。自閉症、ADHD、双極性障害、大うつ病性障害、総合失調症などは、それぞれの症状に基づいて全て異なる病気に分類される。

しかしながら、2月発行のランセット メディカル ジャーナルに掲載された研究では、5つ全ての病気には、共通するいくつかの遺伝子的リスク要因が示されている。

DSM-5の作業部会会長であるデイビット・クプファー医師は、「手引きの変更は臨床医がより正確に精神疾患を特定するために役立ち、治療の継続を維持しながら診断を向上させる。我々は、これらの変更は臨床医のより良い患者サービスの提供を手助けし、新しい研究に基づいてこれらの疾患への理解の深化を期待している」と述べている